ワイヤー入りガラスという金網が入ったガラスをご存じでしょうか。オフィスや集合住宅の窓を設置する場合に、ワイヤー入りガラスを検討している方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、ワイヤー入りガラスとは何か?という基礎知識から使用する理由と導入する際の注意点を解説します。
ワイヤー入りガラスとは?
ワイヤー(網)入りガラスとは、ガラスの中に金属のワイヤーが含まれたガラスのことを指します。
網掛け模様のガラスを見たことがある人は多いと思いますが、そのガラスもワイヤー入りガラスのひとつです。ワイヤー入りガラスは網入りガラス、線入りガラス、防火設備用ガラスなど、様々な呼ばれ方をします。
ガラスの中に入っているワイヤーの入れ方には、以下の3種類があります。
名称 | 特徴 |
クロスワイヤ | ワイヤーが格子状に入れられ、マス目のように見える |
菱形ワイヤ(ヒシワイヤ) | ワイヤーが対角線上に入れられたもの |
プロテックスワイヤ | ワイヤーが縦方向にのみ入れられたもの |
網入り・ワイヤーガラスの種類
出典:セントラル硝子
ワイヤー入りガラスは、ガラス表面の質感によって、「霞(かすみ)ガラス」と「磨(みがき)ガラス」の2つに分けることができます。
「霞(かすみ)ガラス」は、ガラス表面に凹凸があり、不透明で視界は鮮明ではありません。一方で「磨(みがき)ガラス」は、ガラス表面はなめらかで透明なため、視界がクリアなことが特徴です。
ワイヤー入りガラスを使用する理由
ここからは、ワイヤー入りガラスを使用する理由を解説します。
主な理由は以下の3つです。
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それぞれ詳しく解説していきます。
理由1:ガラスの飛散を防ぐことができる
ガラスの中にワイヤーを入れることで、ガラスが割れた際にガラス片をつなぎとめておくことができるため、ガラス片が飛び散ることを防げます。火災時や台風や竜巻などの突風によって窓ガラスが割れたとしても、怪我や被害を最小限に抑えることができるでしょう。
このような効果があるため、火災が起こりやすいとされている防火地域及び準防火地域内にある建物には、ワイヤー入りガラスを用いることが法律で義務付けられています。
理由2:火災時の延焼を抑えることができる
先ほどワイヤー入りガラスはガラスの飛散を防ぐ効果があると説明しましたが、ガラスが飛散しないことによって、火災の時に炎や火の粉がガラスの外に出る、あるいは入ってくることも防げます。
延焼防止に役立つため、ガソリンスタンドや飲食店など火災の際に被害が大きくなりそうな場所で多く使われています。
理由3:価格が安い
ワイヤー入りガラスは、他の防火性を備えたガラスよりも比較的安く購入できます。製品のサイズや種類によって異なりますが、他のガラスは、ワイヤー入りガラスよりも1.5~2倍の値段がします。コストを抑えたいのであれば、ワイヤー入りガラスはおすすめです。
ワイヤー入りガラスを使用するときの注意点
ワイヤー入りガラスを使用する注意点は以下の通りです。
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それぞれの注意点を詳しく解説します。
注意点1:場合によっては割れやすい
ワイヤー入りガラスの耐熱温度は110度と言われており、防火性に優れていますが、耐熱性はそこまで高いとは言えません。なぜなら、熱割れを起こすからです。
熱割れとは、ガラス表面の温度差が大きくなることでガラスにひび割れが生じることを指します。金属でできたワイヤーは、ガラスに比べて熱を吸収しやすく、温度が高くなりやすいです。高温のワイヤーが膨張し、低温であるガラスの端部分との温度差が生じることで、ひび割れが起きるのです。
次のような状況のとき、熱割れが起こりやすくなります。
- 太陽光によってガラスがあたためられたとき
- カーテンや家具などがガラスに密着しているとき
- 冷暖房の風が直接ガラスに当たるとき
熱割れを防ぐにはガラス表面に温度差をつくらない、熱がこもらないようにするということが重要です。
注意点2:防犯対策としては好ましくない
ワイヤーが入っているため、防犯対策に適していると思われがちですが、強度はそれほど高くなく、防犯目的で使用することは避けたほうがよいでしょう。
割れた際の破片の飛び散りは防げますが、ワイヤーは意外と簡単に切断することができ、強度も他のガラスと大差はありません。防犯対策用のガラスをお探しの場合は別の強化ガラスを検討すべきです。
注意点3:見た目がよくない
ガラスにはワイヤーの黒い線が入っています。そのため、リビングなどのおしゃれな空間には水を差すことになるかもしれません。
また、「霞(かすみ)ガラス」の場合は、不透明なため、窓からの眺めを楽しみたいと思っている方には不都合です。ガラスを選ぶ際は、使う場所も考慮する必要があります。
まとめ:用途にあったガラス選びを
この記事では、ワイヤー入りガラスの概要、メリットと注意点について紹介してきました。ワイヤー入りガラスは防火性と飛散防止に特化していますが、防犯性は低く、熱割れが生じることも少なくありません。
窓ガラスの交換の際は、メリットだけに飛びつくのではなく、デメリットも踏まえ、自分の用途に合っているかを確認するとよいでしょう。